工工四ひろばの著作権問題の始まり
以前の「工工四ひろば」を運営していた頃、あるユーザーさん(捨てアカウントのような形でした)から、こんな投稿が寄せられたことがありました。
「工工四ひろばの著作権はどうなっているのでしょうか?」
正直に言うと、サイトを立ち上げた当初にJASRACへ著作権の扱いについて問い合わせたことはありました。ただ、当時の自分には返ってきた説明や規約があまりにも難解で、理解しきれずそのまま放置してしまっていたのです。
サイトの利用規約には「著作権のある楽曲は投稿・公開しないでください」と一応記載してはいたものの、管理者である自分自身の意識も低く、投稿してくださるユーザー側の意識も決して高くはありませんでした。結果として、事実上の野放し状態(無法状態)が長く続いてしまっていたのです。
そんな中で届いた、冒頭の指摘の投稿。ハッとして「このままでは絶対にまずい」と思い直し、改めてJASRACへ現状を相談しに行くことにしました。
過去10年分に遡る請求の現実
ネット上を見渡せば、今でも個人のブログやサイトで権利処理がされていない無料の工工四が転がっているのをよく見かけます。
しかし、運営者として覚悟を決めてJASRACへ相談に赴いた結果、突きつけられたのは「過去に遡っての利用料の請求」でした。
さらに追い打ちをかけたのが、当時の工工四エディターの仕様です。
「楽譜の閲覧・ダウンロード」「ストリーミング」「ブラウザ上での音の再生」ができる仕組みになっていたため、JASRACの規定上3つの許諾区分が必要であると判断されました。
それぞれの許諾区分につき、毎月の最低利用料が5,000円。
つまり、【月5,000円 × 3区分 × 12ヶ月 × 過去10年分】という計算です。
届いた請求書を見たときは目の前が真っ暗になりました。過去の自分の甘さと怠慢が招いた「自業自得」の結果とはいえ、個人で払うにはあまりにも重い金額です。今でも毎月、分割で支払いを続けています。
NexToneとの出会いと救い
著作権について必死に勉強していく中で、JASRACとは別にもう一つの音楽著作権管理事業者である「NexTone(ネクストーン)」の存在を知りました。
NexToneはJASRACと同様に楽曲の著作権を管理している会社ですが、個人開発のWebサービスに対する運用面で非常に柔軟でした。そもそも「月額の最低利用料」という縛りがなく、過去分の清算についても「Google AdSense等の広告収入」に対して「サイト上で公開されていたNexTone管理楽曲の比率」を掛け合わせて算出する方式を取ってくれました。AdSenseの履歴が残っている期間分のみの算出だったこともあり、JASRACと比較して現実的かつ納得のいく金額で精算していただくことができました。
そして2026年6月、新しく生まれ変わった「工工四ひろば」と「工工四エディター」のリリースに合わせ、NexTone様と正式に契約を締結。翌7月からNexTone管理楽曲の正規販売をスタートさせることができました。
NexToneの管理楽曲には、BEGINやTHE BOOMなど、沖縄ポップスを代表する素晴らしいアーティストの曲が多く含まれています。著作権使用料も販売額の10%で、最低利用料の縛りもありません。工工四ひろばのような小さな個人サービスでも、胸を張って健全に運営できる仕組みを提供してくださり、本当に救われました。
JASRACとの協議と今後の課題
一方で、日本の音楽著作権の大半を管理しているのは、やはりJASRACです。今後サイトをさらに広げていくためには、JASRAC管理楽曲の正規許諾・販売も避けては通れません。
現在もJASRACと相談を続けていますが、やはり最大の壁は「月々の最低利用料」です。
もし以前と同じように3つの許諾が必要だと判断されると、毎月15,000円の固定費が発生します。手数料10%で回収しようとすれば、毎月15万円以上の売上がひつようになってしまい、個人運営の規模ではとても維持できません。
そこで今、データ形式の扱いについて協議を重ねています。
JASRACの規定では「MIDIデータ販売」であれば許諾区分が1つで済むケースがあります。工工四エディターのデータも、本質的には音階やタイミングを保持した演奏データ(MIDIとほぼ同等の構造)です。
ユーザーの皆様には「購入したMIDIデータを工工四エディターに読み込ませて演奏・表示する」というひと手間をおかけすることになるかもしれませんが、この方式であれば許諾を1つに絞り、月々の負担を抑えて正規配信できる見通しが立ってきました。現在、この形で正式な許諾を得られるよう調整を進めているところです。
振り返ってみて
分割払いはまだ続いていますし、JASRACとの契約も道半ばです。
でも、あの時「捨てアカウント」で著作権について厳しい指摘を書き込んでくれた方がいなければ、自分はずっと現実から目を背け、サイトを真っ当な形でリニューアルすることすら諦めていたかもしれません。
あの指摘は、目を覚まさせてくれた大切なきっかけだったのだと、今では心から感謝しています。